125 号 2026年2 月発行
キーワードは「正義」
伊藤千尋(国際ジャーナリスト)
今年は年明けから日本も世界も大きな変化を迎えました。米国のトランプ政権は南米ベネズエラを武力で侵攻し、大統領夫妻を拉致しました。国際法を踏みにじる行動です。それに対して欧州をはじめ世界は非難しましたが、高市早苗首相はなんら批判せず、米国のやることはすべて従う姿勢を見せました。唐突な総選挙を行うと発表したのはその直後です。
高い支持率を背景に「今なら勝てるし、勝てば好きに国政を操れる」と計算したのでしょう。ところが、先に自民党から離れた公明党が急転直下、これまで敵対していた立憲民主党と手を組みました。「中道」を看板に掲げた新党を結成したのです。でも、政策を見ると首をかしげます。安保法制の廃止や原発ゼロなど立憲民主党が基本に掲げていた政策が放棄され、公明党の方針そのままです。このため立憲民主党は公明党に吸収されたと揶揄されました。
たしかに高市政権を続けさせないためには、対抗できる有力な勢力が必要です。そのためには所期の理念を一時的に棚に置いて結束しようという発想も分かります。しかし、防衛問題や原発問題は政策の基本ではありませんか。それをなし崩しにしてしまった。
民主党の安住淳幹事長は「辺野古の米軍基地建設のストップは現実的ではない」と述べました。沖縄の議員から抗議されると。まだ考えが整理されていないと逃げる始末です。
中道がいったん掲げた政策は選挙後も維持され、党員はそれに縛られるといいます。つまり立憲民主党出身の議員は当初の基本的な主張を一時的にではなく永久に捨てるということです。いくら選挙に勝つためとはいえ、これでは勝ったとしてもどんな意味があるのでしょうか。
そして選挙の結果は、自民の圧勝です。同時に中道の惨敗です。自民は議席を118伸ばし、中道は議席を118失いました。中道の議席を自民が奪った形です。新党結成を主導した中道の安住淳氏も落選しました。強い「やる気」を見せた高市首相が腰砕けの中道を突き倒したと言ってもいい。立憲民主党が共産や社民との共闘を捨てて公明と組んだことが自民の圧勝を招いた。その高波に左派が飲み込まれた格好です。
政治が変動するとき、これからどうなるのかという声をよく聞きますが、どうなるかと悩んでいる場合ではありません。問題はこの機に日本の平和に向けて私たちがどうするか、です。戦後80年を超えて、日本の平和はまさに正念場を迎えました。
いや日本だけではありません。それ以上に世界は混乱しています。トランプ米大統領はこんどは、欧州のグリーンランドを手に入れると豪語しています。北大西洋条約(NATO)の同盟国であるデンマークの土地でもかまわず奪おうとする。もはや暴走です。
さらには国連に代わって世界の平和を主導する組織として「平和評議会」を創りました。そのトップは永久にトランプ氏自身だとし、米大統領の任期を終えたあとも世界の帝王になろうとしています。その常任の参加国になりたければ10億ドル(約1580億円)を出せと条件をつけました。すべてはカネと武力という発想に基づいています。
これまでの世界はカネや武力ではなく、理念や理性を制度の基礎としてきました。第2次世界大戦後の国連憲章は、国の規模の大小にかかわらず1国1票として公平性をうたいました。こうした人道に基づく平和でなく、ただただ力で強い者が勝ちカネがすべての世界に根本から変えようとするのがトランプ流です。人間性を破壊し暴力ですべてを支配する考え方です。ハリウッド映画に出てくる「悪の帝国」そのものではありませんか。
これに追従しようというのが高市首相の基本姿勢です。米国の軍艦に乗ってトランプ氏にキャピキャピとすり寄りました。強い者が勝つというトランプ的な信念を高市氏も持っています。その強さが自分への高い支持率を生んだと信じ、大義のない選挙を導き出しました。
このまま進めば世界も日本も、軍事と経済で強い者が支配することになります。どうしたらいいのか、と悩む前に私たちの基本的な立ち位置をしっかり見据えることが重要です。
世界の共通した規範はこれまで国連憲章でした。それをはずして米国の新しい秩序に従うわけにはいきません。国連憲章が冒頭で掲げるのは、国際紛争を「平和的手段によって、かつ正義及び国際法の原則に従って実現すること」です。そして「諸国間の友好関係を発展させ」「すべての者のために人権及び基本的自由を尊重する」ことです。
キーワードは「正義」です。社会正義、国際正義に基づかない身勝手な行動を許さないことをすべての国家、すべての人々が基本に据えることが平和な世界を構築することにつながります。強者だけの世の中になれば、弱い者は強い者に従うか、あるいは自分が武力でとって代わろうとし、世界は果てしない戦国時代となるでしょう。
私たちはあくまで正道を歩もうではありませんか。私たちだけではない。カナダのカーニー首相も「ポピュリズムと民族ナショナリズムが台頭する時代にあって、カナダは多様性が弱みではなく強みになり得ることを示すことができる。進歩と正義へと向かう余地は、なお残されている」と述べました。 国連中心の平和を維持するということです。トランプ氏が牛耳る米国でもニューヨークに民主的社会主義を掲げるマムダニ氏が元旦に市長に就任しました。トランプ大統領の支持率は急速に低下しています。秋に予定される米国の中間選挙では共和党の敗北が予想されています。あきらめないことです。
国連憲章が生まれたあと、世界に非核地帯が広がりました。今や世界の半数以上の国が参加しています。非核地帯の最初は南極条約でした。南極に利害を持つ国が集まってそれぞれが権利を主張して収拾がつかなくなった時、当時の日本代表は日本国憲法前文と9条を英訳して配りました。それを読んだ各国の代表は「素晴らしい、この精神を取り入れよう」と急速に合意が進み調印にこぎつけたのです。平和利用(軍事利用の禁止)と核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止をうたう南極条約が発効したのは1961年です。憲法9条は世界平和に具体的に貢献した輝かしい実績を持っています。
私たちはどうすればいいのか、端的に言いましょう。私たちの立ち位置、「正義」の基本を譲らないことです。本当の強さはそこにあります。9条を今まで以上に高く掲げましょう。混迷した世界を救うのにどうしたらいいか。答えは出ています。世界に9条を広めることです。今の世界でそれができるのは、日本で9条を守ってきた私たちです。
秘密より自由を! 「スパイ防止法」はいらない
太郎:最近ニュースで「スパイ防止法」って言葉をよく聞くけど、正直よく分からないんだよね。スパイって悪い人なんでしょ? それを取り締まる な ら、いいんじゃないの?
次郎:そうかな。「スパイ防止法」は、国家の安全保障や機密情報を守ることを目的として検討・導入されるからね。ただ非常に大きな危険性がある んだ。
太郎:危険性?
次郎:一番の問題は、「何がスパイ行為に当たるのか」という定義が曖昧なんだ。定義が広すぎると、政府にとって都合の悪い情報を調査したジャー ナリストや、政策を批判した市民、研究者までが処罰の対象にされるんだ。
花子:取材や政府批判が「国家機密に触れた」と判断されたら怖いよね。表現の自由や報道の自由が萎縮してしまうわ。
次郎:その通り。厳しい刑罰や強力な捜査権限が伴うと、人々は無意識に「触れてはいけない話題」を避けるようになる。そうなると、民主主義に不 可欠な自由な議論や視が弱ま視が弱まり、政府の不正や失策が表に出にくくなるんだ。
太郎:つまり、社会の透明性が失われるってことか。
次郎:そうだね。さらに問題なのは、恣意的に運用される危険性だ。スパイ防止法は捜査機関に強い権限を与えることになるが、独立した監視機関や 明確な歯止めがなければ、特定の思想や団体、少数派を狙い撃ちにする道具になりかねない。
花子:民主主義って、結局は国民の「知る権利」が前提だよね。表現の自由や言論、集会、報道の自由が保障されてこそ成り立つのにね。
次郎:でも実際は、2013年に特定秘密保護法ができてから、国民の知る権利は狭められてきている。政府が「秘密」にできる範囲が広がったうえ 、違反すれば懲役刑という刑罰が科される可能性もあるんだ。
太郎:その影響で、日本のメディアは萎縮しているって海外から指摘されてるからね。
花子:そこにスパイ防止法までできたら、どうなるんだろう。戦争の話や自衛隊の活動について話すだけで、防諜の対象になるかもね。
次郎:戦前と似た状況だよ。戦争中は、軍の話をするだけで監視され、「壁に耳あり、障子に目あり」と言われて沈黙を強いられた。密告が奨励され 、家族や隣人同士が疑い合う社会になった。
太郎:今回の法案で特に怖いのは、当時と違って、デジタル化が進み、政府が集める情報量が桁違いに多いことだね。
花子: アメリカ国家安全保障局、中央情報局(CIA)の元局員だったスノーデンの告発でわかったように、アメリカでは通信インフラに入り込んで 、世界中の個人情報を収集していたんだよね。
次郎:尾行をしなくても、プロバイダーにアクセスすれば、通話内容やメール、位置情報、スマホのマイクやカメラ、検索履歴も把握で時代だから。
太郎:つまり、現代の諜報機関は、特高警察以上の力を持ちながら、市民からは見えにくい存在になっているってことか。
花子:じゃあ、こんな法律を止めるために、私たちには何ができるの?
次郎:まずは、こうした事実を知ってもらうことだと思う。「スパイを防ぐ法律」と聞くと、自分には関係ないと思ってしまいがちだからね。
太郎:でも実際には、外国出身の隣人を疑ったり、自分の発言を控えたりして、社会の空気そのものが変わってしまう。
花子:多様性や創造性が失われて、愛国心や忠誠心を競い合う、社会になるかもしれない。それって、日本がかつて進んだ道だよね。
次郎:だからこそ、この法律がどれほど社会を息苦しくし、暗くする危険を持っているのかを伝えていくことが大切なんだと思う。
花子:「国家の安全」を理由に人権侵害が正当化された例は多いわよね。時次郎:その代表例が、戦前の日本にあった治安維持法だよ。
太郎:普通の刑事事件なら、被疑者が逮捕された時点で警察が発表して、報道もされる。裁判も公開されて、市民や司法がチェックできるよね。
花子:そうね。
次郎:治安維持法は1925年に制定され、天皇制や私有財産制を否定する思想を取り締まる目的で運用された。当初は共産主義者や社会主義者がそ の対象だったが、だんだんに拡大解釈され、労働運動家、知識人、宗教者などが弾圧され、特別高等警察(特高)による監視や逮捕、拷問が横行し た。
花子:考えを口にしただけで捕まった人も多かったんだよね。
次郎:そうだよ。作家の小林多喜二は、『蟹工船』で労働者の過酷な現実を描いたことで知られているけれど、1933年2月 日に逮捕され、激し い拷問の末その日のうちに殺された。彼の死は、言論や思想の自由が徹底的に踏みにじられていたことを象徴している。
太郎:そんなことが本当にあったなんて。
花子:だからスパイ防止法が、治安維持法の再来じゃないかって心配されているの。特に「国の安全を脅かすおそれ」のような曖昧な表現は、どうと でも解釈できてしまうから。
太郎:最近、国家情報局を作るって話もあるよね。情報を一元化すれば、効率は上がりそうだけど。
次郎:確かに効率が上がる面はあるかもしれない。でも、権限が強すぎる組織に十分なチェック機能がなければ危険だ。戦前には特高警察が国民の思 想や言動を監視していた。
花子:国家情報局が、同じような役割を持つんじゃないかな。
次郎:高市内閣は戦前の政治体制に近づいていると批判する人もいるね。
太郎:高市首相は就任前から「スパイ防止法」の必要性をたびたび強調してたんだ。昨年5月、自民党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会長だっ たとき、当時の石破首相に「治安力」の強化を提言したんだ。
次郎: 参政党の神谷宗幣代表が推進している「スパイ防止法案」も危ないね。治安維持法について基本理念は間違っていないて言ってるね。「スパイ 防止法」の制定は、国民監視の強化と戦争国家化への道を開く現代の治安維持法だね。
太郎:戦前も、そうやって少しづつ戦争に進んでしまったんだよね。
花子:だからこそ、私たち国民が私たち国民が考え続けることが大事なの。
太郎:じゃあ、何をすればいいのかな?
次郎:まずは知ることだね。一つのニュースや意見だけを鵜呑みにせず、情報を比べること。
花子:それから市民同士で議論したり、反対する野党と連携して、政府をチェックすることも大切ね。
次郎:デモや署名、選挙で投票することも、立派な意思表示だよ。
太郎:平和や民主主義って、放っておいて守られるものじゃないんだね。
次郎:うん。だから「ちょっとおかしいな」と感じた違和感を大切にすることが必要なんだ。
花子:私たち一人一人が考えて、つながって、行動する。それが、平和と民主主義を守る一番の方法なんだと思う。
太郎:吉永小百合さんが「日本政府は憲法を変えて、戦争に参加す
る道を準備しようとしていますが戦争とは、国が人に人殺しを命ずること。どんな戦争にも、正義はありません。核兵器の廃絶と、世界の平和を 求めてみんなでできる限りの行動をしましょう」と訴えている。
次郎: 憲法を変えるって、特に憲法9条だよね。戦争をしないって決めた条文のね。
太郎: 戦争の悲惨な経験から生まれた約束で、人の命を守るための大事な歯止めなんだ。
花子: だからこそ、今も私たちがその意味を考え続け行動する必要があるのよ。私たちも頑張りましょうよ!
中村茂樹(練馬演劇を観る会幹事)
台湾有事発言の目指すもの
◆高市首相の台湾有事発言
昨年11月7日の衆院予算委員会で、高市総理は台湾問題に関し、「戦艦をつかって、武力行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態」と答弁した。『その戦争』に日本も参加できる、と表明したことになる。ここまで踏み込んだ発言は、政府が公式の場で表明することはなかった。
中国外務省の林剣報道官は 日に「この言動は一つの中国の原則および中日間の四つの政治文書の精神と国際関係の基本的な原則に著しく反し、中国の内政に乱暴に干渉し、中国の核心的利益に挑戦し、中国の主権を侵害するもの」と批判した。
◆発言の反響
12月8日の集会では、田中均氏、東郷和彦氏など幾人もの外務省幹部や外交官のOB、中国との交流・友好団体の代表などが高市発言を批判した。11月17日には撤回を求める「官邸前緊急行動」など市民団体の集会・行動が行われている。日中友好協会は、11月17日に高市総理宛の抗議声明を出し、
①台湾問題は中国の国内問題
②高市発言は中国への内政干渉③日中共同声明の「一つの中国」の立場に反するとして発言の撤回を求めた。
一方、逆の声も多くあった。昨年12月の毎日新聞社の世論調査でも、「撤回の必要なし」67%、「撤回すべき」が11%であった。SNSでも「撤回必要なし」が多数を占めた。その応援には元自衛隊幹部やマスコミまでが加わり、SNSのポストを盛り立てている。マスコミなら、真相を明快に摘出し世論の中の『ウソ』を洗い出すことこそ大切だ。
◆発言の真意
高市首相は、1月26日のテレビ朝日の討論会で「台湾で大変なことが起き、米軍が攻撃を受けたとき、日本が何もせずに逃げ帰れば、日米同盟はつぶれる」と発言した。アメリカべったりの安全保障政策の底がみえる。これこそ本意だったのではないか。
高市首相は「軍拡」の旗を振り、国債でアメリカの兵器を買い、財界が要望する兵器生産基盤の強化に金をばらまき、日本の産業構造を軍事依存に追い込もうとしている。自民党の軍需企業からの献金や統一教会との癒着を隠ぺいしようとしているとも言えよう。
◆デタラメ発言―「一つの中国」
台湾についての認識は、日中両国が国交樹立に向けて調印した1972年9月 日の「日中共同声明」に立ち返る必要がある。その第三項は、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。」としている。当時の大平外相は国会などで「中華人民共和国政府と台湾のとの間の対立の問題は、基本的には中国の国内問題」(1973年衆院予算委)と答弁している。
日本政府は中華人民共和国との国交樹立とともに、中華民国との公的関係を終了させた。1972年 月 日、中華民国は国連を脱退し、中華人民共和国にその席を譲った。現在、中国と国交を結ぶ国は181か国に及んでいる。高市発言は日中間の約束にも国際法の原則にも真っ向から背を向けることを表明したものである。
◆デタラメ発言―存立危機事態
さらに、問題なのは「存立危機事態」だ。2003年6月に成立・施行された「武力攻撃事態対処法」第二条第四項は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と規定している。
高市発言は、中国が自らの領地に武力攻撃しアメリカが武力介入している、と想定している。アメリカも中国も、これまでの日本政府も、ここは外交上の「戦略的あいまいさ」で明言しなかった。ところが高市発言は、中国への内政干渉となる事態を、妄想している。現トランプ政権が中国との摩擦を避けようとしているなかで、高市首相がひとり「戦争、戦争」と言う姿は危険であり滑稽でさえある。
日本は、共同声明の中国との約束を違えて中国に内政干渉し、日本の憲法を踏みにじり、国民に多大な実害を負わせることになる。
◆外交・交流の拡大を
中国の指摘と主張は、国際政治の筋から見て間違ってはいない。日本社会の右傾化への警鐘も図星だ。しかしその日本への見返りが、旅行者の抑制や日本人のイベント中止、日中の文化・学術団体の交流の抑制などであった。今こそ逆に、様々なレベルでの交流を拡げ、互いに理解し合う事こそが必要です。 大槻孝一 日中友好協会練馬支部事務局長
国会議員定数削減に反対します
衆院選の争点のひとつ、「国会議員定数削減」について考えてみます。日本維新の会は自民党高市政権に入るにあたり、「身を切る改革」と称して衆院議員の一割削減を条件にしました。2025年 月5日に国会提出した法案は法施行1年後に削減方法で与野党が合意できなければ、小選挙区を 、比例代表を 、それぞれ自動的に削減するという内容である「自動削減条項」を盛り込む強引なものでした。当法案は衆院解散で白紙となりますが、自民党は引き続き衆院選の公約に「衆院議員一割削減を次期国会で法案成立させる」ことを掲げました。
2022年 月、報道により自民党の政治資金パーティーによる裏金疑惑が明らかになり、国民は現代の日本も「政治腐敗」の状態にあるのだと再認識しました。定数削減はこうした政治への不信感と高い国民負担率への不満に対応したふりをする、ガス抜き策に思えます。しかし、政治腐敗に対して定数削減というのは「臭いものに蓋」をすることでしかなく、政治に民意をより反映させたいと思うのであれば、投票率の上昇による国会議員の質の向上と同時にむしろ、国会議員の「定数増加」こそが必要になるはずです。定数削減をすれば国民から見た政治への距離感はさらに広がり、また憲法 条違反の「一票の格差」も拡大するでしょう。
国政選挙の投票率が50%台前半を推移する中、定数削減となれば少数政党はおろか、国民の「大多数」にとって政治は遠いものとなり、人々の心が政治から離反することによって、社会は「誰にとっても」生きにくいものになってしまいます。なぜなら、社会では人々が支え合って生きているからです。
ОECD加盟の か国中、人口百万人あたり国会議員の数を見ると日本はアメリカ、コロンビアに次いで3番目に少なくなっています。また議院内閣制の国では加盟国中最も少人数になっています。議院内閣制は憲法 条1項、 条1項に定められ、すなわち首相は議員から選び、また閣僚の過半数は議員でなければならないとされています。日本国憲法を定めたときには三権分立と議院内閣制を併存させることで、より民主的な行政権を理想としたのではなかったでしょうか。ここでわたしたちはいま一度、憲法策定当初の趣旨に立ち戻るべきです。
憲法第 条第1項には「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」とあります。国会は民意に基づくべきであり、その方法が「定数削減」であってはならない、と語りかけてくるように感じます。 前田 瑠(桜台9条の会)
鈴木牧之の『北越雪譜』と豪雪災害
◆豪雪地帯と特別豪雪地帯
国土交通省の「豪雪地帯帯道府県別市町村数」によると、北海道から中国地方の鳥取県まで豪雪地帯とされる市町村は532ある。うち特別豪雪地帯に指定されている市町村は201である。
特別豪雪地帯とは豪雪地帯の中でも特に積雪量が特に多いこと、積雪によって長期間にわたり交通が途絶するなど、住民の生活に著しい支障が生じる市町村を指すが、北海道の 市町村に次いで特別豪雪地帯が多いのは新潟県で 市町村を数える。
今年、新潟県は2022年以来という大雪に見舞われ、県は陸上自衛隊に大雪による災害派遣を要請した。地元紙「新潟日報」によると、5日までに新潟県内の災害救助法が適用された自治体での大雪による死者は 人に及ぶ。最も多いのは上越市、十日町市の4人で、上越市と魚沼市では3人が亡くなっている。
◆北越雪譜』が描いた雪国の難義
昨年、第52回大仏次郎賞を受賞『北越雪譜』は、鈴木牧之が雪国の風物や暮らしを記した 年に及ぶ曲折を山東京伝、曲亭馬琴(滝沢馬琴)ら当代随一の戯作者と出版人を絡ませて描いた歴史小説だ。牧之が生まれ、縮を商いながら,生涯を送った北越塩沢は現在の魚沼市塩沢である。その『北越雪譜』に次のような件がある。
されば雪中に在る事凡そ八ケ月,一年の間雪を看(み)ざる事僅かに四ケ月なれども、全く雪中に蟄(こも)る は半年なり。ここを以て家居(いえい)の造りはさらなり、万事雪を禦(ふせ)ぐを専らとし、財を費やし力を尽す事紙筆に記しがたし。
雪下(ゆきふる)事盛(さかん)なる時は、積る雪家を埋めて雪と屋上(やね)と均しく平になり、明かりのとるべき処なく、昼も暗夜のごとく燈(とも)火(しび)を照して家の内は夜昼をわかたず。連日の晴天も一時に変じて雪吹となるは雪中の常なり。其の力樹(き)を抜き屋(いえ)を折(くじく)。人家これが為に苦しむ事枚挙(あげてかぞえ)がたし。
『雪夢往来』には、牧之が江戸に出て、儒学生に越後の雪深さを説明しても本気にされないどころか、噴き出される場面が出てくる。
牧之「そうですな、一番積る時季には高さが一丈(約3メートル)ほどになりましょうか」
塾生「おいおい、からかっちゃいけねぇよ。いっくら俺たちが江戸から出たことねぇといっても、そんな法螺にゃあ引っかからねぇよ」
中には、教場の畳を叩いて笑い転げるものまである。「おめぇさん、真面目そうな顔をしてとんだ法螺吹きだね」
◆高齢化で増す雪国の苦難
新雪の重さは通常、1立方メートルあたり50~200キログラムだが、雪が溶けて再凍結し、密度が増すと重さはさらに増し、1立方メートルあたり300~600キログラムにもなる。一丈にも積もる雪が「家を埋めて屋根の高さにもなり、樹を折り家を壊し人をも埋める」という情景は東京に住む私たちの目にも浮かぶ。
魚沼市も高齢化が進み、新潟県の「2027年度市町村別年齢3区分別人口」によると、新潟県の老齢人口率は34・6%で、全国の老齢人口率(2026年)の29・3%より5・3%高いが、魚沼市はそれをさらに上回り、40・9%に達する(因みに新潟県の市町村で老齢人口率の最も高いのは東蒲原郡阿賀町で52・9%である)。一人暮らしの高齢者も少なくない。
今後一層の少子高齢化が避けられそうにない日本で、豪雪地帯の難義は解消されるのか。事は豪雪災害にだけではない。30年前の阪神大震災はお年寄りを含む災害弱者が逃げ遅れ、建物倒壊や火災の犠牲になった。高齢化は当時より進み、2050年には「小走り」ができず迅速な避難が難しい高齢者が人口の2割に達するという。手助けできる若者も減り、命を守る対策が重みを増すなか、25年後といわず、今からその対策を国と自治体に求めると同時に、自身も対策を講じていかなければならない。 勝山 繁(「ねりま九条の会ニュース」編集委員)
住民本位!あなたの声で区政を変える
4月5日告示、12日投票の練馬区長選で、私たちは吉田健一さんを擁立することができました。なぜ九条の会が区長選に取り組むのか。それは、民主主義憲法の柱である地方自治、とりわけ住民自治を生かすためです。
現在の練馬区政は、住民の声を聞く場を持たず、陳情を次々と拒否し、国基準を一歩も上回ろうとしません。戦前の「御上」意識を引きずり、形式的に意見を聞いたふりをするだけの行政運営が続いてきました。これを改め、国の悪政から住民を守り、どんな人の意見にも耳を傾け、日常的に住民参加を保障する区政が必要です。住民とは区民だけでなく、外国人、通勤・通学者、滞在者も含まれます。
前川区政は、都との太いパイプを売り物に、大型道路建設や美術館建て替え、駅前再開発、大江戸線延伸への不要な200億円負担、稲荷山公園拡張による500世帯の立ち退きなど、ゼネコン優先の区政を進めてきました。一方で、学校給食無償化、保育園継続、生理用品備え付け、家賃補助、公契約条例など、私たちの切実な要望はことごとく拒否されました。教育予算は 区最低水準、住民の反対を無視した学校統廃合、民間委託と非正規化の拡大など、トップダウンの専制的区政でした。
◆区長が変わればこうも違う
杉並区政は、区営住宅の抽選に外れた人に年30万円の家賃補助、介護ヘルパーに月1万円の補助。世田谷区は、空襲や艦砲射撃で傷ついた人に3万円の見舞金を支給、これは日本で初めて。公契約した業者の労働者の最低賃金を1610円に引き上げ。その他の区でも競って住民本位の区政を実施してきましたが、練馬区は国基準を一歩も上回ることを拒否してきました。私たちは、こうした区政を変えるために、2年前から「みんなで練馬区長選挙2026」を多くの住民、議員で発足、住民要求をまとめ、専門家から学び、練馬区長選にあたっての政策をまとめ、仲間を増やし、力を蓄えてきました。前回とは大違いです。区政転換の絶好のチャンスです。
また「勝手連新しい練馬を創る会」を発足させ、これまで か所で吉田健一さんと語りあいました。公園の汚れたトイレ、道路にベンチ、防災対策、地域バス、狭い道路の拡張、高齢者のアパート契約の保証人、75万区民のコミュニティ形成、農業継続、憲法についてなど、たくさんの要求が出され、これに吉田さんが明快に答える。悩みが解消し、何としても吉田さんを区長にと意気が上がる会となりました。これまで地域の九条の会が中心になりましたが、これからもたくさんの小集会を開き、練馬全域の住民の意見を結集する選挙にしたいと考えます。
また、日中政府間の対立の下、民間や、自治体間の交流は大きな意義があります。姉妹都市である北京市カイデン区との友好交流復活。2つの自衛隊基地を抱える練馬区を災害と戦争から守り、自衛隊員と住民の命を守るために平和を維持する努力、他の22区長との共同の実現、東京都や国に対しても要望をする、積極的な外交などを求めたいと思います。
練馬区はサラリーマンの多くは寝に帰るところで、区政についてよく知らず、私たちの政策が知らされなければ誰に入れてよいかわからず、投票率は低いと予想されます。また総選挙の結果、自民党が圧勝し勢いをつけており、都や、国とのパイプを売り物に、利益誘導で、ゼネコン、不動産業界を動員してくることが目に見えています。しかし高市内閣の暴走に対する私たちの反撃で、区民の警戒心も高まるはずです。政治は一点突破で足元から変えることができる。
この4年間、吉田健一さんは、落選しても公約を守り、学習会や、フードバンクなどの行事に参加し、ねりま九条の会員として平和の問題にも熱心に取り組んできました。難民への住居あっせんや、区内の実情を足で歩いて調査してきました。幼稚園理事長として、またアメリカグアムでの不登校児支援学校の副校長として、子どもの教育について造詣が深く、光が丘消防団本団部長として、地域の防災対策に力を注いできました。 歳と若いが苦労人で、人柄は誠実で、頭の回転が速く、解決の方向を即断する能力が素晴らしい。一度話したら、その魅力にひかれる方です。
投票日まで1ヶ月半です。負けられない選挙です。すべての住民に呼びかけましょう。あなたの区政への要望は何ですか、あなたが区政を変える番だと。 ねりま九条の会事務局長 大柳武彦