121 号 2025年6月発行           

 消費税減税・コメ問題と減税財源
              
浦野広明(立正大学法制研究所特別研究員・税理士)


  厚労省が発表した24年度の毎月勤労者統計調査によれば、「実質賃金」は3年連続で減っている。そんなことはどこ吹く風、自民党の森山幹事長は「消費税の減税阻止に政治生命をかける」と言った(毎日新聞5月17日)。
 一方経団連が同日発表の大企業の春闘回答・妥結状況によれば、賃上げ率は5・38%上がっている。これはあくまで貨幣額で表現された「名目賃金」である。名目賃金は月給30万円、時給1000円などと表現されるが、物価上昇で実質の価値は減る。物価が20%上がれば1000円の価値は2割下がる。

◆賃金・年金・預金は日々刻刻と減少

 名目賃金から物価上昇分を除いたものが実質賃金、つまり、モノやサービスを買える購買力である。物価上昇率が名目賃金の上昇率を超えると実質賃金は減少し生活の質は下る。インフレによる物価上昇は実質賃金が減少にとどまらず、年金も預金も日々刻刻と減っているのである。だから、「消費税の減税を7割超求める」(時事世論調査5月22日配信)など、一連の世論調査で国民の7割がいずれかの方法で消費税の減税を待ち望んでいる。それと共に「財源をはっきりすべき」としている。

◆財源はある

 各党の主張は、「自民 減税しない」「公明 食料品減税」「立憲民主 食料品ゼロ1年間」 「国民民主 時限的5%」「日本維新の会 食料品ゼロ2年間」「共産党5%からゼロに」「れいわ新選組食料品ゼロ」「社民党 3年間ゼロ」、など色々である。
 財源は所得が増えるにしたがって税率をだんだん高くする「所得の総合累進課税」で生まれる。不公平な税制をただす会は、総合累進所得課税によって、58兆1497億円の新たな財源が生まれることを明らかにしている(『福祉と税金』2024年10月1日)。軍事費拡大には財源がないとは言わない石破首相は、参院予算委員会で、軍事費の国内総生産(GDp)比2%超への引き上げについて、「安全保障環境が厳しければ厳しいほど増やすということは国家に責任を持つものとして判断としてあるべきものだ」として増額の可能性を認めている( 年 月6日)。どこの国でもどの時代でも国民生活の犠牲と軍事は表裏一体である。
 
◆コメの根本的問題

 コメを中心とする食料自由化の基本的要点は、食糧輸出国には有利、輸入国には不利である。このWTO(世界貿易機関)の不公正なしくみは世界最大の食料輸入国である日本の国民にとってはとても承服しがたい。食料自由化を進める影の正体は世界の食料支配をめざす多国籍アグリビジネス(食料経済産業)である。
 コメ不足について、元農林水産省官僚で東京大学特任教授・鈴木宣弘氏は次のように指摘している (浦野が要約)。
 農漁業は国民の食生活の根幹を支えている。これら産業の衰退は国民生活の安全保障(食料安保)を土台から崩壊させる。軍隊による外敵の侵略よりは、食料をつうじて日本人の胃袋に対する「侵略」のほうが、はるかにさし迫っている。この崩壊を阻止し、農漁業を守ることである。食料自由化は、安い食品がほしいという消費者の願望につけこむが、食糧安全性を考えなくてはならない。食品企業寄りの委員がつくる国際基準は甘く、輸出企業にとって都合がいいが、日本のような食料輸入大国にとっては大変迷惑である。発がん性のある添加物、残留農薬、検査体制の規制緩和など問題は多い。
これ以上の食料輸入に歯止めをかけ、減反から増産へと自給率上昇につとめる。コメの価格安定に政府が責任を持つ。輸出に頼る工業と輸入に頼る農業との不均衡をなくす。農漁業が一本立ちできるようにする。主権国家として、日本の生産者と消費者の両者の生産・生活をともに保障する政策への転換は待ったなし。「ミサイル買っている場合か」である)。

◆消費税は一律5%に

 総理をはじめ自民の役職者は繰り返し「消費税は社会保障の財源」なので引き下げはできないと述べる。しかし、消費税法は特定の経費に充てる目的で課す目的税でなく、使途を特定せず一般経費に充てる普通税である。総理らの発言はまったくの的はずれである。 年の消費税導入から 年までの 年間で国と地方を合わせた消費税収は累計508兆円、一方、法人税と所得税・住民税は累計609兆円減収。消費税収と法人・所得・住民税減収の対応を見れば、消費税が大企業・金持ち減税だったことがわかる。
 生活費には、住居、水道光熱、備品消耗品、衣服履物、保険医療、交通、通信、自動車関連、教養娯楽、新聞図書等があり、食料品だけではない。第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣氏は、平均的四人家族で食料品ゼロだと
年に6万4000円、5%消費税だと年14万1000円の減税となると述べている。食料品ゼロではなくすべての生活費にかかる消費税を5%に引き下げることが最善策である。

 

いま、医療・介護はピンチに!

                             都立病院の充実を求める連絡会代表委員 前沢淑子

 いま、東京の医療・介護の現場は大ピンチです。診療報酬や介護報酬が低く抑えられているうえに相次ぐ物価高。経営は火の車、現場では低賃金・過密労働で職員は疲弊し、退職が続く中で職員も集まらない状況が続いています。国や東京都からの支援は待ったなしです。

◆医療分野では

 いま、都内病院の経営状況は、約半数が赤字です。公立 %以上、民間病院では全国 %に対して東京では %が赤字経営で小規模病院の閉鎖や有床診療所から無床診療所への転換もあとを絶たちません。武蔵野市では病院の閉鎖が相次ぎ市内の病院は1カ所になりました。物価高騰を反映しない診療報酬制度により赤字経営を余儀なくされている民間病院に東京都から132億円の補助が予算化されましたが、1年限定です。政府のねらいは、医療費削減を目的とした病床削減です。1床減らしたら420万円の支援金をだすと、7000床を目標にしたところ全国で5万4000床の申請があったとのことです。
 都立病院が独法化されてまる3年、 病棟705床が休床(工事中の休床含まず)で再開のめどは立っていません。稼働率は、都立76・9%、公社 56・6%だったのが、独法化後は25・2%と23%以上も落ち込んでいます。看護職員は700人不足、医師・メディカル職員の不足も深刻で病院によっては救急を受けられない診療科もあります。そして、紹介状なしの窓口負担は1科ごとに7700円、有料個室の占有率は %で、患者負担は増え続けています。
 また、国民健康保険料が大きな負担になっています。 区のほとんどが6万円超え、特に千代田・中野・江戸川区が高くなっており、国保料不払いに対する理不尽な差し押さえも進行しています。入院保証金、有料個室料など窓口負担も増え、結果受診抑制での重症化や孤独死につながっています。 

◆介護・障害分野では

  2024年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬を引き下げ、事業所の閉鎖は過去最高です。「老人福祉・介護事業」の倒産と休廃業・解散は2024年1年間で800件近く過去最多です。訪問介護事業所の休廃止も増え練馬区では189カ所(2024年6月)が185カ所(同年 月)に。
 東京都は高齢化が進み 歳以上は22・8%(2024年10月1日)でひとり暮らしも増え、介護の充実はまったなしです。
 また、リスクの高い出産によって医療的ケアの必要な子どもが増えており、発達障害児の増加が社会問題化しています。特別支援学校は少し増えていますが、その先の作業所や通所施設、さらに通所施設では対応できない重度の自閉症や医療的ケア児の入所施設のは絶対的不足です。 容易に面会に行けない九州や青森、北海道の施設に入所せざるを得ない実態があり、保護者の高齢化からも早急な対策が必要です。
 
◆都議会議員選挙へ声を上げよう!

 医療・介護は人権です。憲法 条をしっかり根付かせ、豊かな東京都の財政を、お台場の噴水やプロジェクションマッピングでなく、いのちを守るために使う都政への転換へ力を併せましょう!


「命がいちばん」、都議選、参議院選にあたって 

                                    大柳武彦(ねりま九条の会事務局長)

  戦後の憲法と、法律によって、農業、医療、保育・福祉分野への株式会社の進出は禁止されました。理由は、命に係わる公共の仕事を金もうけの対象としてはいけないからと、退却されては困るからです。ところが新自由主義政策によって、法律は改正され、政府の保護が削られ、民営化と競争によって、ふるいに掛けられてきました。今、その結果が表れているのです。コメ不足と価格暴騰、食料自給率の低下を率先したのは、小泉進次郎農林大臣が自民党の農林部会長の時、Тppなどで、関税ゼロを唱え、農産物輸入を推進したからなのです。これで100万人の農家が減りました。これは医療、保育、介護、年金、福祉、教育、災害対策、すべての公共の分野についても言えます。国民の命と、暮らしを守る責務を放棄した国の政治の姿がここにあります。原因は、アメリカ言いなりと、財界の利益中心の、自民、公明の政治にあります。今求められているのは、憲法に基づく本来の政治を取り戻すことです。それは、トランプ流にいうなら社会主義的政治であるともいえます。
 先の衆議院選挙は、この金権・裏金政治にNОを突き付けました。次の7月の参議院選挙でとどめを打つためには、その直前の都議会議員選挙が行方を決めるのです。
 しかし野党には偽物が多い、目くらましに気を付けなければならなりません。マスメディアもそれに協力するし、SNSも金もうけのためとしても活用されます。都知事選挙や兵庫県知事選挙を見れば歴然です。ボーとしてはいられません。
 ねりま九条の会は新しいチラシを作りました。特徴は「命がいちばん」。ガザの虐殺、日本の各地で起きる殺人事件、命の尊さが軽んじられています。原因は「教育勅語」や「軍人勅諭」といった戦前・戦中の思考が社会に生き続けているからではないかと考えます。それは親から子へと受け継がれ、今は天皇のために死ぬことはないが、叩いて子どもをしつける、命と個人の尊厳を踏みにじることがあとを絶ちません。それを断ち切るには教育が大切です。そして応援する国民が増えなければなりません。保育園、幼稚園から、人権教育を進め、大きな成果を上げている韓国を見習う必要があります。親は子どもを叩かなくなったといいます。
 そして競争と管理主義の教育を終わらせなければなりません。最も遅れているのが東京都です。少ない教師が、増える仕事と多くの子どもをこなすには、管理主義が楽だからです。これでは子どもがたまったものではない、不登校やいじめが増える原因です。
 もう一つ見落とされているのが災害対策です。能登半島地震規模が首都圏を襲ったらどうなるか、想像しただけでも恐ろしい。その教訓から、一番大切なのは水の確保、上下水道の耐震化です。東京都の耐震化 率は %、残る1万2600キロメートルを毎年340キロメートル工事しても 年かかります。これでは間に合いません。
 次に、老朽木造住宅の耐震補強です。練馬区は一部地域の助成を行いますが、全地域に広げなければ意味がありません。東京都も練馬区も開発優先。高層建築と広い道路の建設で、ゼネコン、不動産業が潤っても、足元が危なくては、高層階は地獄に変わるでしょう。再開発で地価が上昇、家賃高騰で東京では住めなくなります。また地球温暖化では東京都は  度アップ、平均の  度を大きく上回っています。
 東京一極集中は危険の集中、地方の疲弊、再開発や軍事費に金を回すゆとりなどありません。
 憲法に基づく政治を回復しましょう。知り合いに呼びかけましょう。 今度の選挙は絶好のチャンスです。

 
 区内九条の会の活動

 ◆桜台九条の会

桜台九条の会は、以下の活動を中心に活動を続けています。
①スタンディング
 週1回30分、練馬駅頭でリレートーク、チラシ配布を行なっています。「強力なリーダーが出てくれば良いんだけどね」と話しかけてくれた方には「それもそうですが、普通の人達の草の根の活動が大切ではないでしょうか」とお話しました。外に出て行くことで少しずつでも人々の関心が憲法や政治に向けられればと願っています。
②月に一度の憲法勉強会
現行憲法と自民党改憲案を読み比べ、活発な意見交換をしています。
③桜台地区へのポスティング
桜台地区にオリジナルのチラシやねりま九条の会のチラシを配布しています。
現在は、対外的な集会などは企画する余裕がありませんが、日常のこれらの活動の継続を第一にしています。
5月3日の憲法記念日には、練馬の集会に10名が参加し、午後の有明には4名が参加しました。スピーチを聞き、青空にひるがえる各地の九条の会や護憲団体の旗を見上げて、「また頑張ろう!」という気持ちを新たにしました。

◆上石神井九条の会
 
「税金はくらしの拡充に署名」など多彩な取り組み 
  上石神井九 条の会は、総がかり行動実行委員会が呼びかけた署名簿、「税金はくらしの拡充に、戦争準備の軍拡は中止して」を 戸に配布しました。これには5月 日の総会に持参してもらえるよう、上石神井9条の会ニュース 号と大軍拡・大増税NО!連絡会のチラシを同封しました。総会は9人参加、清水雅彦日体大教授(憲法学)と小森陽一九条の会事務局長の 講演DVDを視聴して、懇談しました。また年間計画を立てて、戦跡巡りなどを行っていきます。
 これまで、2月の新年会では渡辺治一橋大学名誉教授の講演記録などのDVDを視聴し、憲法について学習し、エネルギーを蓄えてきました。新しい署名については地域に出て、九条運動の大切さを呼びかけ、新たな同調者を増やそうと意気込んでいます。また、ねりま9条の会には署名の集約と、本部への送付を要請しています。
 このほか、事務局長の太田さんは自宅を開放し、毎月第3水曜日、太田カフェを開催、鷺宮診療所の看護師さんの派遣を受けての健康相談、DVDの上映やカラオケなど、持ち寄りのつまみで、コーヒーを飲みながら懇談、毎回 人の参加で盛り上がっています。

◆春日町9条の会
  原爆絵画展と映像と講演を9月に
 
昨年の春日町図書館での原爆写真展の成功から、今年は広島の高校生の原爆絵画展の準備を進めています。8月中は学校の絵画展に会場を押さえられ、9月 日から 日までの開催を計画しています。絵画は東京土建練馬支部が所有する絵画が借りられ、土、日にはアニメなどの上映と被爆体験を聞く会を計画しています。問題は4日間、朝から夜まで、受付、相談の担当者を配置することです。そこで9条の会だけではできないので、地域の新婦人の皆さんの協力を得て実行委員会を発足、企画や当番体制について相談しています。チラシはお寺や教会、小中学校に申し入れ、高校門前でも配る予定です。とにかく子どもたちに戦争の悲惨さ、非人道性を繰り返し伝えることが大切だと思います。

◆谷原台九条の会
  シベリア抑留の真実を語る(再)
 
 シベリア抑留の体験者西倉勝さん100歳を招いて、再びシベリア抑留の体験を語ってもらうことにしました。
 今回は小林昭菜・関東学院大学准教授から、シベリア抑留の歴史的背景について語ってもらいます。 11月1日(土)9時30分〜11時30分、ここねりホールで開催します。
 このチラシ、ポスターは学校にも申し入れます。皆さんもぜひ多くの若い人を誘ってください。

◆「悪魔の飽食」を歌う
 11月29日 ねりま文化センター大ホール
 
作詞・森村誠一さん、作曲・池辺晋一郎さんの「悪魔の飽食」は日本陸軍731部隊の細菌、毒ガス兵器開発のため3000人もの中国、ロシア人が人体実験で麻酔もなく切り刻まれました。5歳の子どももいたのです。
 おぞましい史実は、日本国民すべてが記憶しなければならないとして、歌につづった作品です。
 ねりま九条の会は要請を受け、全面的に協力します。しかし、題名を聞いてしり込みする人が多いと思われることから、著名人の賛同、ぞう列車合唱も合わせて歌うことを提案。檀ふみさん出席、ちばてつやさん、日色ともえさん、香川京子さん、嵐圭史さん、大石芳野さんが賛同してくださいました。
 チケットは2000円ですが、素晴らしい合唱であり、お話です。戦争はいかに非人道的かを伝え、広めるために、周りに声をかけて参加をお願いします。

トランプ関税とスバルの企業城下町太田市  影響は自動車すそ野産業全体に・・・・・・
                                          勝山 繁 (練馬区立美術館を考える会事務局長)
◆大内要三さんの「太田市立美術館・図書館訪問記」

 ジャーナリストの大内要三さんが、5月15日のフェースブックに群馬県太田市の市立美術館・図書館の訪問記を書き、美術館の展示、企画、建物の構造・設計について、手厳しい評価をしています。同美術館・図書館については、建築家の樋口学さんも本紙で2回にわたり訪問記を書いています(2023年10月・111号 2024年6月・116号)。
 筆者も一昨年に同美術館・図書館を訪れた際、練馬区が区立美術館・図書館の建替えと中村橋のまちづくり構想の設計を委嘱している平田晃久氏の設計は、太田市立美術館・図書館の設計と同工異曲という印象を受けました。
 「書棚が人の背丈より高く、分散しているので本が探しにくい。図書館としていちばんダメなのは、外壁が大きなガラス窓なので、本背が陽に焼けています。要するに美術館も図書館も利便性がまことに低い」(大内さん)というところもまったく同じです。
 しかし、本号では太田市立美術館・図書館についてではなく、自動車メーカーSUBARUの企業城下町・太田市と日本の自動車関連業界が受けるトランプ関税の影響について、書いてみたいと思います。

◆SUBARUの歩みと企業規模・業績

 太田市は、明治までは半商半農の集落に過ぎませんでした。ところが、1918年に日本最初の民間飛行機製造会社である中島飛行機が設立されて飛躍的に発展、第2次世界大戦中は一大軍需工業都市となりました。現在の株式会社SUBARUは、元海軍機関大尉・中島知久平が1917年に創設した飛行機研究所を源流とし、以後何回か商号を変更してきました。
 1919年 中島飛行機製作所が発足。民間製作最初の軍用機「中島式四型」を軍に納入、以後第二次世界大戦に至る戦時体制下で国家資金のバックアップで三菱重工と並ぶ日本最大級の軍用機メーカーであり、零戦(零式艦上戦闘機)や隼(一式戦闘機)の主力製造工場として存在しました。
 1945年 中島飛行機がGHQによる財閥解体で解体され富士産業と改称。
 1953年 富士重工業株式会社を設立。
 2017年 商号を富士重工業株式会社から株式会社SUBARUに変更。
 (株)SUBARUの規模・業績は、2024年の「総合レポート」(ディスクロージャ資料)によれば、次のとおりです。
・従業員数7693人
・生産拠点 自動車2拠点 群馬県太田市、アメリカインディアナ州航空宇宙2拠点 栃木県 愛知県
・関係会社数94社
・自動車販売網 国内440店舗 海外約 か国・地域
・連結業績 売上収益 4兆7029億円 営業利益 4682億円

◆米国への依存度が高いSUBARU

 スバルは日本の自動車メーカー中で米国販売比率が日産自動車に次いで高く、収益面でも米国への依存度が大きいメーカーです。生産台数約  万台のうち約95万台(69・4%)は米国で生産されています。トランプ関税の対象となっている日本から米国への輸出台数は約 万台で、総生産台数の約 
%を占めています。スバルにとってトランプ関税の影響は極めて深刻な問題なのです。

◆トランプ関税の影響は地域全体に

 大内さんも太田市立美術館・図書館の訪問記で触れていますが、
SUBARU本工場は太田市スバル町1、SUBARUと太田市の一体関係というか、太田市のSUBARUへの依存を表わしています。
 自動車産業は、関連産業のすそ野が広く経済波及効果が大きいため、日本経済で重要な位置を占め ています。関連産業として、鉄鋼、金属、軽金属、ガラス、ゴムやプラスチック、革などの石油化 学品、半導体などの原材料、鋳造などの加工技術、電子機器の制御を行うコンピュータソフト、宣伝広告を行うマスコミや販売を行う自動車販売店のほか、運輸業、ガソリンスタンドや自動車整備 業、一般道路や高速道路の建設や整備、自動車保険の加入、自動車教習所の講習、自動車運転免許 の新規作成や更新、さらには駐車場の建設や経営、レンタカー事業など、極めて多岐にわたります。
 雇用者も、自動車産業の関連産業を含めた従業員数は約550万人(メーカー約130万人、販売店・中古車販売・整備工場従業員約100万人)、ガソリンスタンド従業員約 万人、トラック・バス・タクシー従業員約230万人)で、日本の労働人口約6930万人の約8%に当たります。すそ野の頂点にある自動車メーカーが受けるトランプ関税の次第によっては、これらの産業の雇用者の職場が相当失われる事態になりかねません。

◆撤退が続く自動車整備事業者、販売店

 自動車のすそ野産業のうち、トランプ関税によって自動車メーカーが受ける影響のあおりを当面もっとも強く受けるのは自動車部品産業、自動車販売店です。帝国データバンクによると、昨年、倒産や休廃業・解散した国内の自動車整備事業者は、過去最多の446件に上りました。トランプ関税は、これに輪をかけるかもしれません。というのも、自動車整備業界も、次のような厳しい環境に置かれているからです。
① 深刻な人手不足
 有効求人倍率は全職種平均の4倍。日本自動車整備振興会連合会によると、ピークの11年度には34万7276人の整備士がいましたが24年度は33万3047人に減少。一方、11年度の有効求人倍率は1倍台でしたが、整備士の減少に連れて求人倍率が急激に上昇しています。
② 低い給与水準 
 厚労省によると、自動車整備などの年間所得は469万円と全職種(506万円)に比べ約7%低いのに 労働時間は全職種に比べて  時間ほど長く、低賃金と若者の車離れにより整備士の仕事に魅力を感じる人が少なくなっています。
③ 他業種との人材争奪
 自動車はいったん買えば車検をはじめメンテナンスが必ず必要になります。日本の自動車保有台数は8000万台を超え、自動車整備は安定収入が見込めることから、中古車販売や板金業が新規参入することで、限られた人材を奪い合う構図になっています。
 自動車販売店も予断を許されません。特に日産自動車の苦境は際立ち、2025年3月期決算は6708億円という巨額の赤字で、国内外で7つの完成工場を減らし、計2万人ものリストラに加えて、横浜市の本社の売却も検討していますから、系列の販売店が受ける打撃も少なくないでしょう。
 トランプ関税の動向、特に日本の自動車メーカーが対策として講じる工場の閉鎖、生産台数・設備の縮小、米国への移転、および従業員のリストラが与えるすそ野産業と地域経済への影響に注視していく必要があります。
  

 

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